# シルバーのクレスト

シルバーカトラリーについてのお問い合わせをいただいたので、ちょっと書いてみます。


いまショップに載せているカトラリーで紋章の入った物がいくつかあります。
これはクレストと呼ばれるもので、オーダーした貴族の家紋を示しています。

このような家紋はジョージアン期からヴィクトリアン中期頃までに特に多く見られ、
シルバーがその頃は特権階級の物であった事を示す証拠とも言えます。

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silver-004007のクレストは、白蝶貝にこの家紋を彫り込み、
そのくぼんだ部分に銅や硫黄などを混ぜて作った黒い合金を流し込んで作られた象眼細工です。
ニエロと呼ばれ,特にロシアンシルバーによく使われます。

クレストだけでは、同じ家紋を使う一族がいくつもありますので、
注文主を特定する事は難しいのですが、
英国では、クレストや
コートオブアームズ(これは個人の紋章、になります。エンブレムともいいます)を
専門に調べている人たちがおり、研究書も多く出ているようです。

手にしたアンティークが、どの貴族の物だったか、
まれに誰が注文したかがわかることもあるなんて、わくわくしますね。
つい映画やドラマに出て来る貴族たちの暮らしを思い浮かべてしまいます。
「日の名残」とか「プライドと偏見」とか、
あるいは連続ドラマのダウントンアビーとか。。

そして下はsilver-009,オールシルバーのデザートセット12本すべてにはいっているクレストです。
上半身のライオンに、王冠が組み合わされています。

この冠ですが、これは紋章学では、
侯爵の爵位を示す冠(クラウンとかコロネット、と呼ばれます)です。
1852年と古い物ですし、かなり由緒ある貴族によりオーダーされた事は間違いないでしょう。
ネットで調べた限りでは、このクレストを使う貴族が10くらい出て来て、特定は無理でした。
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そして、もうひとつ、こちらはジョージアン1830年のサルヴァ
ブログにも以前載せましたが、そのサルヴァにも、なんだかかなり跡をたどれそうなクレストが。
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鷹あるいはワシ(でも翼がないので、ドラゴンかも..)が、
十字架をくわえていて、シンプルなクラウンの上にのっています。
それをベルトのような図柄がとりまき、
中には In /Crug/Triumphans と銘文が刻まれています。
Crugでの勝利者、という意味のようです。
1136年にCrug Mawr(ウェールズ地方)でノルマン人との戦いがあり、
ウェールズの圧倒的勝利に終わったと英語版wikipediaにありますから、
おそらくそのときの戦功で、この紋章を賜ったのでしょう。
そうだとすれば、1830年のサルヴァですから、このクレストを刻ませた貴族は、
たいへんに古い家柄ということになります。
まるでミステリーを解き明かしていくようです。

専門の書物があれば、かなり絞り込むことができそうですが、
それはこのサルヴァを手にした方が実際に調べられた方がいいように思います。
まさにコレクターの醍醐味であり、喜び,楽しみともなるでしょう。