100年前の印刷について

ここで紹介しているポストカードは、19世紀の終わり頃から20世紀のはじめ、
第一次大戦のあたりまでのものが大半です。
その技法も、ほとんどがChromolitho(英語でいうと、Color Lithographとなるのかな。)
多色刷りの石版画です。

郵便制度がヨーロッパ全体で整って、きれいな印刷もできるようになって、
この時代は絵はがき黄金時代ともいわれています。


1800年代後半に、ヨーロッパでは子供向けの絵本や挿し絵本が
木版の多色刷りで出版されるようになりました。
しかし木版は摩耗が早く、大部数を印刷することができません。

石版の多色刷りは木版に比べて摩耗が少なく
一度にたくさん(500枚とか1000枚とか?)印刷でき、
しかも画家のタッチをかなり再現できたので、
おおいに活躍することになりました。
ポストカードのデザイン自体は、ヨーロッパの他の国でされても
、印刷は技術の優れたドイツで、ということが多かったようです。
文字通り、石を使うので、その砂目のような点々が特徴です。

*リトグラフ/石版画Lithograph

版画技法の一種。版式では平版技法に分類される。
原理は脂質と水が互いに反発し合う性質を利用するもので、
1798年にドイツのA・ゼーネフェルダーによって、
楽譜出版のための印刷法として考案された。

版材には、高純度の石灰石(バイエルン地方産出の石灰石が最良とされている)を用い、そのため別名を石版画ともいうが、現在では、ジンク、アルミニウムなどの金属版も使用される。

製版は、まず版材の上にクレヨンやトゥーシュと呼ばれる油性の溶き墨で描画することから始まる。次に、版面全体にアラビアゴムと硝酸を塗布する。こうすることで、描画部の脂質に対する感受性が化学的に強化され、非描画部は逆に親水性が強まる。印刷の際は、版全体に薄く水をひいた上に、油性のインクをローラーで転がすと、親水性の非描画部は水分を保持しているためインクをはじき、描画部のみにインクを着肉することができ、これに用紙をあててプレス機で刷りとる。

他の版種と異なり、製版時の描画にあたって画家が通常使うクレヨンや筆が使用可能で、しかも、それらの調子が紙に描いたものと同じように再現できることが特徴である。
また、感光乳剤を使用した写真製版も広く行なわれている。
商業印刷の オフセット印刷はリトグラフを大量生産に向くように改良した技法である。

(木戸英行*現代美術用語辞典から)