カトラリーに施すエングレーヴィングとチェイシング

HOLD

カトラリーの彫りについて、かいてみます。
画像は、エルキントンの美しいデザートナイフとフォークのセットです。
このように両面に装飾したものでは、エングレーヴィング(彫刻)は浅い輪郭線のみで、
ほかは主にフラットチェイシングという技法を使っています。
両面をぐいぐい彫ってしまうと強度が落ちるので、
削り取らないチェイシングで装飾するのです。

工具について説明した資料はとても少なくて、
ヴィクトリア&アルバート美術館のシルバー部門のところにいくと、少しは見られますが。
書物にもちょっぴり写真が出ていますが、一見しても何がなんだかよくわかりません。

シンプルイズベストで、大量生産をよしとする現代では、
もはや当時どういう道具で細工をしたのかよくわからない部分もあるのです。

このエルキントンの細工を見ての推測ですが、輪郭線は浅いエングレーヴィング、
ほかには、たぶん先の尖ったニードル(針)を熱して、描いています。
熱した部分は溶けて、ぽつっとへこみます。黒い点もニードルです。
グレーに見える部分は、スタンプのようなものをコンコンとたたいて跡をつけていきます。
あくまでも推測ですが、それほど的外れではないと思います。

では、両面装飾のナイフはみんなチェイシングか、というとそうでもなくて
、クリスティング(洗礼のお祝い用のセット)のナイフ(実用にはしないので)や、
シルバープレートの大きめカトラリー(プレートの下は普通、鉄を使うことが多い)などは、
華やかな両面エングレーヴィングがみられます。